愛と勇気と缶ビール

ふしぎとぼくらはなにをしたらよいか

2012年度Androidアプリ開発収支報告 あるいは個人でAndroidアプリ開発は儲かるのかって話

最初に書いておくと、これはサクセスストーリーじゃないぞよ。

それは去年の暮れのことだった

思えば僕がAndroid開発やってみよっかなーと思ったのは、去年の暮れにこの裏Android Advent Calendar2011のエントリーを読んだのがきっかけだった。ホントに儲かんのかなー、と思って。要は分かりやすく金に釣られたわけだ。

といっても、上記のようなエントリーを読んで「よし、自分もやってみよう」と思う人は実際にはそんなに居ない。なぜかといえば、「よしやろう」と思う前に以下のような疑問・思いに支配されて手が動かなくなるから。

  • 新しいプラットフォーム・言語について勉強して、ある程度使いこなせるようになるまでには結構なコストがかかるよねー
  • たまたま上記ブログの人が大成功してるだけで、そんなに上手くいくわけねーだろ
  • Android(iOS)アプリってもう色々な個人・会社が参画してるし、過当競争だよねー
  • 俺はHTML5がそのうち市場を席巻すると思ってるし、その時代が来るまでネイティブアプリに時間を費やすなんて無駄なことはしたくないぜ

どれもある程度は正しいし、別に間違っちゃいない。ただ、共通しているのは自分が行動した結果から導いた考えじゃない、ってことだ。ネットにある情報を拾って、なんとなく現状を理解したような気分になり、自分がやらなくてもいい理由を作る。よくある話だ。

去年の暮れには、僕も上のような疑問に囚われて、ネット上で裏付けを探した。裏付けっていうのは、これからiPhoneが流行るのかAndroidが流行るのか、果たしてホントに儲かるのかどうか、そういう疑問に対する信頼のおけるソースだ。今思えばそんなもの探したって何の意味もないし時間の無駄なんだけど、行動に踏み出す勇気のない人間のやることってなぁ大体そんなもんである。

結局そういう裏付けを探すのはやめにして、市場調査と称してAndroid Marketのランキングをなめるように見ることにした。僕は年に一回、大学の部活の先輩の家で忘年会をやるために大阪に帰る。その集合場所であるスーパーマーケットのベンチで延々とHTC evoを使ってランキングを見ていた時のことを思い出すと、今でもなんだかドキドキする。謎の野望に燃えていた。

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1月〜3月くらいのこと

大阪での忘年会の後、実家に戻ってウダウダし、本格的に開発を始めたのは1月の中盤に東京に戻ってからだった。本当は実家でも「端末を振ると起動するメモ帳アプリ」という不思議な物体の開発に勤しんでいたのだが、そもそもそういうアプリはお行儀がよくないというのと、アプリの起動が満足のいくレスポンスタイムにならなかったので、ボツにした。

ランキングを見て、その時点では「お話し系アプリ」がまあまあ流行っていることが分かっていたので自分もそれに倣うことにした。「お話し系アプリ」というのは何ぞやというと、多分みんなどこかで見たことのあるだろう「感動する話」「泣ける話」「都市伝説」「凶悪犯罪事件簿」「2chの怖い話」みたいなアプリの僕の中での総称である。正直言って下らないことこの上ないジャンルなのだが、一つ一つのお話しはテキストファイルにでもしてアプリにぶっ込んでおけばいいし、アプリの作りも簡単なので、一番初めに作るものとしては最適に思えた。何でもそうだけど、最初からすごいもの・かっこいいものを作ろうとするのはアホである。自分に対して適切な高さのハードルを設定していくのが挫折しないコツなのだ。

かくして「お話し系アプリ」に手を染めたのだけども、これが意外に儲かった。昔すぎてあまり記憶に残っていないが、出してしばらくして一日に200円くらい広告で儲かるようになったと思う。お話し系アプリは一度全てのお話しを読んだらやることがなくなってしまうし、それを防ぐためには自分でコンテンツを追加しなければいけないのであまり筋はよくないのだが、それでも初めに沢山コンテンツを作っておけばそれなりに時間を潰せるものになる。そんでもってお話し系アプリをわざわざ端末に入れて読むような人は間違いなく暇なので、暇な人なら広告をクリックすることもそれなりにあるだろう、という読みだった。

ちょっと脱線すると、そのアプリに適さない収益化モデルをとって儲かるの儲からんのと言ってもしょうがないのである。カメラアプリを使う人は、今すぐ何らかの写真を撮りたい人だ。だから、そんな人に広告を見せてもしょうがない。だからカメラアプリは有料アプリにして売り切りにするのが合っているし、その逆として「お話し系アプリ」は無料にして広告を入れるのが適している。お話し系アプリは、ヒマな人がある程度の時間を使って画面を眺めるものだからである。

広告は、当時色々試して単価が高かった(1クリック10円くらい?)Adlantisとnendをエロ広告ありでメインにした。この後具体的な金額の話も出てくるが、他のアドネットワークはほとんどオマケみたいなもんである。ちなみに、これは1〜3月くらいに試した結果から判断しただけなので、多分今は色々変わっているだろう。

このアプリでだいたいの開発のノリ、Android Marketのノリが分かったので、次はアンサイクロペディアがSmartPhone向けviewを持っていないことに着目して専用ブラウザを作ることにした。これについては記事も書いている(「アンサイクロペディア・ブラウザ」とかいうAndroidアプリをつくった - 愛と勇気と缶ビール)。レビュー依頼をしたら、結構有名どころのアンドロイダーに取り上げてもらえたこともあってかまあまあDLが伸びた。これを出してしばらく後の広告収入は、2つのアプリを合わせて一日に500円くらいだったような記憶。

その次は、AKB48やその眷属のGoogle+での発言をGoogle+のアカウントなしで見られるアプリを作ることにした。これは僕の作ったものの中でおそらく最も手が込んでいて、Google+をクロールしてDBに突っ込むcronjobと、API serverもどきとクライアントが絡んでいる。さくらのVPSでUbuntuを立てて、サーバサイドはPerlで書いた。クライアントでは、ネットワークアクセスをバックグラウンドでやってUIに結果を戻す、という部分をScalaのActorで書いている。書き忘れていたが、今のところAndroidアプリはjberkel/android-plugin · GitHubを使って全部Scalaで書いている。個人的にはiOS/Androidのアプリを別言語で書く系のソリューションはあまりお勧めしないのだが、android-pluginは例外で、なぜなら

  • ScalaからJavaのAPIは透過的に使えるので、問題が起こらない (AsyncTaskなどの稀な例外を除く)
  • android-plugin自体がよく出来ている。レールがちゃんと敷かれており、こうした類のhackに伴う罠や障害が少ない。
  • パフォーマンスも普通のアプリを書く分には全然問題ない(と、おもう)

…などなど。特にUIが絡むコードでは「イベント発火」→「処理」→「UIを更新」という流れのコードを書くことが多いのだが、こうしたコードではクロージャが自由に使えると小回りが利いて便利である。AndroidをJava以外で書く系のソリューションについてちょっとだけ書くと、個人的にはMonoDevelopや次いでTitanium辺りがマシなのではないかと思っている。PhoneGapはiOSでならいざ知らず、Androidで使うのはちんこ丸出しで歩くようなものだセキュリティ的な意味で論外である。詳しくは以下の記事を参照されたし。

僕はまあ諸々の理由でScalaで書いていますが、大事なのは「何で作るか」ではなく、「何を作るか」なのは言うまでもないことです。Native vs HTML5論争とかも含めて。


でまあ、どのくらい儲かったか

能書きはこの辺にしておくとして、実際にどの位のお金が得られたかというと、2012年の1月から開発を始めて今までで約20万円くらい。ちょうど、経費なども考えると税金を払わなくてもいい位の金額である。実質的に収益があったアプリは3本くらいで、いずれも広告収入。開発期間は2週間〜4週間くらいで週末プログラミング駆動。一番良かった時(5〜7月くらい?)の週末に一日1200円くらいの収益があった。今は放置しているのもあいまってユーザが減ったり、クリック広告の単価が減るなどもあいまって一日に300円くらい。実質上4月以降はほぼ何も開発せずに放置している。

1年で20万というと、ビッグなビジネスを目指している人や、スマホアプリで一山!みたいなこと考えてる人から見たらカスみたいなもん。サラリーマンのお小遣い稼ぎと思えばまあまあ上々。個人の実感としては、開発にかけた時間コストが大したことない(1〜3月に作って残りはほぼ放置)のと、得られた知識やノウハウなどの金銭以外のメリットも合わせて考えると全然儲けもの。まあ、こういう計算に「得られた知識」とか入れちゃう時点でアレなんだけどね。

ちょっとだけ現Google Playの数字をば。MAUだとかDAUだとかそういうのは一々出してません。めんどいので。

x お話し系アプリ アンサイクロペディアのやつ AKBのやつ
total user installs 12500 15389 5583
active device installs 1997 6497 1183

これを見て「これだけしかユーザいないのかー」と思うか、「これだけの数のユーザしかいない割には儲かってる」と思うかはあなた次第ですが、まーどうなんですかね、比べたことないので分かりません。それこそモデルにも寄りますからね。

iOSやAndroidのマーケットにどんどんアプリが増えていて、企業によるクオリティが高いアプリが増えているのは確かですが、僕個人としてはまだまだアイデア次第で個人がつけいる隙はあるんじゃないかなー、と思っています。だいたいみんな同じようなアプリを作ってるだけ、っていうイメージなので。もちろん例外はありますが。企業と同じようなアプリを個人で作ってもクオリティの面で勝てる確率は低いので、別の所で勝負する必要がありますな。

Androidアプリで得た小金でMac miniを買って、今はiPhoneアプリを作っていたりもします。自分が普段使うものは、別にお金にならなくても全然構わない、むしろお金が入ればラッキー、くらいの気持ちで作れるのでよいですね。プログラミングをこういう形でお金に結びつけるのがあまり好きじゃない方もいるかもしれませんが、小遣い稼ぎになるというのは技術習得に向けたモチベーション維持という意味でも地味によいです。捗ります。

最後に宣伝になってしまってアレなのですが、ついこの間作ったiPhoneアプリの「漢の家計簿」ですが、11/30までセールで0円、それ以降は85円、という形にしていたのを以降ずっと0円にしました。

  • お金を節約するためのアプリに85円とはいえ初期投資が要るのってどうなの?
  • やっぱ有料だとDL数が減ってしまうので、思ったよりもうからなかった無料にしてより多くの人に使ってもらいたい
  • シンプルで使いやすいアプリを標榜してるけど、まず使ってもらわないとやっぱり良さは分からない。では無料だ

という理由からです。次のアップデートで、カテゴリの編集などの追加機能をIn-App Purchaseで買えるようにする予定です。結局金取るんかい!っていう話ですが、嫌儲はくたばれまあ、開発に使う時間はタダではないので。

そんなわけで今後も勉強がてらiPhoneやらAndroidやらのネイティブアプリや、そっちが適していると思ったらWebアプリなども作ったり作らなかったりするかもしれませんが、よろしくお願いします。

プログラミングAndroid

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